AWS S3は非常に安定したオブジェクトストレージですが、
「なぜかアップロードできない」「急にエラーが出る」といったトラブルは意外と多く発生します。
本記事では、AWS S3にアップロードできないときによくある原因と、その具体的な対処法を、
AWS初心者の方でも切り分けできるように体系的に解説します。
よくあるエラー例
S3アップロード失敗時、以下のようなエラーが表示されることがあります。
-
AccessDenied
-
Forbidden
-
The bucket does not allow ACLs
-
InvalidAccessKeyId
-
SignatureDoesNotMatch
-
Unable to locate credentials
-
An error occurred (403) when calling the PutObject operation
エラーメッセージは原因特定の重要なヒントになります。
原因① IAMユーザー・ロールの権限不足
内容
最も多い原因が IAM権限不足 です。
S3へアップロードするには、最低限以下の権限が必要です。
-
s3:PutObject
-
s3:PutObjectAcl(ACLを指定する場合)
-
s3:GetBucketLocation(ツールによって必要)
確認ポイント
-
使用しているIAMユーザー/IAMロールは正しいか
-
ポリシーに対象バケットARNが含まれているか
対処法(例:IAMポリシー)
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 |
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Allow", "Action": [ "s3:PutObject", "s3:GetBucketLocation" ], "Resource": "arn:aws:s3:::example-bucket/*" } ] } |
原因② バケットポリシーで拒否されている
内容
IAMで許可されていても、バケットポリシー側でDenyされているとアップロードできません。
よくある例
-
特定IPアドレス以外を拒否
-
HTTPS以外のアクセスを拒否
-
特定IAMロール以外を拒否
確認ポイント
-
Effect: “Deny” の記述がないか
-
Condition 条件に該当していないか
原因③ S3のパブリックアクセスブロック設定
内容
S3では「パブリックアクセスブロック」が有効だと、
ACLやポリシーによる公開設定が拒否される場合があります。
確認ポイント
-
バケットの「アクセス許可」→「パブリックアクセスをすべてブロック」
-
アップロード時にACL(public-readなど)を指定していないか
対処法
-
ACLを指定せずアップロードする
-
必要に応じてパブリックアクセスブロック設定を見直す
原因④ アップロード先リージョンの不一致
内容
CLIやSDKで リージョンを間違えている と、署名エラーが発生します。
代表的なエラー
-
SignatureDoesNotMatch
-
AuthorizationHeaderMalformed
対処法
-
バケットのリージョンを確認
-
AWS CLIの設定を修正
または
原因⑤ 認証情報(Access Key)の問題
内容
以下の場合、認証エラーになります。
-
Access Key / Secret Key が間違っている
-
無効化・削除されたキーを使用している
-
環境変数が設定されていない
確認ポイント
-
aws configure listの結果 -
環境変数 AWS_ACCESS_KEY_ID / AWS_SECRET_ACCESS_KEY
原因⑥ オブジェクト所有者設定(ACL無効)
内容
最近のS3では 「ACL無効(Bucket owner enforced)」 がデフォルトです。
この状態でACL付きアップロードを行うと失敗します。
対処法
-
--aclオプションを削除 -
アプリケーション側のACL指定を見直す
原因⑦ ファイルサイズ・ネットワーク問題
内容
大容量ファイルや不安定なネットワーク環境では失敗することがあります。
対処法
-
マルチパートアップロードを使用
-
タイムアウト設定を延長
-
ネットワーク経路(Proxy / FW)を確認
切り分けチェックリスト(簡易)
-
エラーメッセージを確認
-
IAMポリシーで s3:PutObject が許可されているか
-
バケットポリシーに Deny がないか
-
リージョンが一致しているか
-
ACL指定をしていないか
まとめ
AWS S3にアップロードできない原因の多くは、
IAM権限・バケットポリシー・ACL・リージョン設定のいずれかです。
落ち着いて一つずつ確認すれば、ほとんどのケースは短時間で解決できます。
S3トラブルは「設定の組み合わせ」で発生することが多いため、
権限とアクセス経路をセットで確認するのがポイントです。

