いつの間にか、誰もが「え?」と思う人がリーダーに昇格している。
特にITやサービス業では、「ドサクサ出世」が珍しくありません。
たとえば、
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技術知識ゼロなのに管理職に
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現場の声を知らないのに会議だけ強い
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「前からいるから」「波風立てないから」という理由で昇進
…そんな構図、あなたの周りにもありませんか?
この“当たり障りない人”が出世する組織構造は、短期的には平穏を保てるものの、
長期的にはチームの士気と成長力を削ぐ重大なリスクをはらんでいます。
■ 「ドサクサ出世」とは何か
“ドサクサ出世”とは、
本来の評価基準が曖昧なまま、
タイミングや人間関係、部署再編などの流れに乗って出世してしまう現象のことです。
よくあるパターン
パターン | 典型的な理由 | 結果 |
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長く在籍している | 「そろそろリーダーにしてもいいか」 | 年功序列化 |
衝突を避けるタイプ | 「あの人は誰とも揉めない」 | 静かだが停滞する組織 |
上層部に好かれている | 「上には気に入られてる」 | 下からの信頼が薄い |
他に候補がいない | 「とりあえずこの人で」 | 一時しのぎの昇進 |
■ 当たり障りのないリーダーがもたらす“副作用”
当たり障りのないリーダーは、表面上は組織を平穏に保ちます。
しかし、その裏で次のような「静かな崩壊」が進んでいきます。
1. 誰も本音を言わなくなる
リーダーが意見を出さないため、部下も発言を控える。
会議は穏やかでも、何も決まらない・進まない。
2. 判断が曖昧になり責任が消える
曖昧なまま案件が進み、トラブル時には「誰が決めたのか不明」状態。
最終的に責任が個人ではなく空気に吸収される。
3. 若手が育たない
リーダー自身が技術・知識に乏しいため、教育ができない。
「自分で考えろ」と丸投げが増え、離職率が上がる。
4. 現場と経営の乖離が拡大
「現場感覚」を持たないまま、上層部への報告だけがうまい。
結果として、現実を反映しない意思決定が繰り返される。
■ なぜ“当たり障り”が求められるのか
組織が“当たり障り”を好む背景には、次のような心理があります。
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トラブルを起こさない人=安心感がある
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波風を立てない人=「管理しやすい」
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意見が強い人=扱いづらい
しかし、これは短期的な安定を買って長期的な停滞を招く危険な構造です。
組織に必要なのは「衝突」ではなく「健全な議論」。
意見の多様性を恐れる組織は、やがて外の変化に適応できなくなります。
■ ドサクサ出世の功罪
見方 | メリット | デメリット |
---|---|---|
短期的視点 | 組織が荒れにくい/調整がスムーズ | 新しい挑戦が止まる |
人間関係的 | 衝突が少なく、雰囲気が穏やか | 無関心・惰性が蔓延 |
管理者側 | コントロールしやすい | 自立したチームが育たない |
長期的視点 | 経営が安定して見える | 組織が老化する |
■ 真に必要なのは「当たり障り“のない”人」ではなく「当たり前を問う人」
「当たり障りがない」=「誰にも嫌われない」ではありません。
本当に価値あるリーダーは、
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必要なときに意見を言える
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部下の信頼を失わずに方針を変えられる
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改善点を“攻撃”ではなく“提案”として出せる
つまり、当たり前を問い直す勇気を持つ人です。
■ 組織が取るべき3つの対策
① 昇進基準を明文化する
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技術・判断・育成の3軸で評価
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「在籍年数」だけでの昇進を廃止
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評価理由をチームに公開する
② リーダー研修を“義務”にする
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コミュニケーション、心理的安全性、会議設計など
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技術・マネジメント両面から教育
③ 役職よりも“役割”を評価する
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チーム内でのリード行動を評価軸に
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「役職者=リーダー」ではなく「行動者=リーダー」へ
■ 結論:本物のリーダーとは
リーダーとは、「目立たない人」でも「空気を読む人」でもなく、
チームを前に進めるために必要な判断を下せる人。
“当たり障り”のなさで出世したリーダーは、
一時的に平穏をもたらしますが、組織を育てることはできません。
今こそ、**「穏やかさ」より「誠実な主張」**を評価する時代です。
その勇気こそが、20年先も生き残る組織をつくります。