Oracle でトランザクションを扱っていると、ORA-08177: can’t serialize access for this transaction が突然発生することがあります。
特に READ ONLY トランザクションモード(SERIALIZABLE) を使っていたり、UPDATE の競合が起きやすいバッチ処理では頻出するエラーです。
この記事では、
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エラーの意味
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発生する仕組み(なるべく分かりやすく)
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よくある原因
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実務で使える対処方法
までをまとめて解説します。
ORA-08177 のエラーメッセージ
意味としては、
「現在のトランザクションでは、一貫した読み取り(シリアライズ)が保証できなくなった」
というものです。
ORA-08177 が発生するタイミング(ざっくり言うと)
Oracle は MVCC(マルチバージョン同時実行制御)により、一貫したデータを読み取る仕組みを持っていますが、以下の状況になると「もう一貫性を維持できない!」と判断して ORA-08177 を投げます。
✓ 同じ行を他トランザクションが更新し、コミットした
✓ 自分の SERIALIZABLE トランザクションが、その変更前のデータを読んで処理していた
つまり、
過去のスナップショットを利用している最中に、その行が他のトランザクションによって更新され、矛盾が生じた場合に発生
するエラーです。
詳しく:どんな動作で起きるのか(図解イメージ)
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トランザクション A(あなた側)が SERIALIZABLE モードで開始
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A がある行を読み取る(まだ更新しない)
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トランザクション B が同じ行を UPDATE → COMMIT
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A がそれと矛盾する処理(UPDATE / INSERT / SELECT FOR UPDATE)を行う
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Oracle「整合性が保てないのでエラーを返す」
ポイントは、
A:「読み取り時点の世界」
B:「現実世界」
この2つの世界が矛盾した時点で ORA-08177 が発生します。
SERIALIZABLE モードが関係している
このエラーが多いのは Serializable トランザクションを使っているケースです。
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1 |
SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE; |
この記事を読んでいる方の多くはバッチ処理や分析処理で上記を設定しているはずです。
SERIALIZABLE は厳密な整合性を提供しますが、
その代わり 更新競合に弱い という欠点があります。
よくある原因まとめ
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 1. 同じ行を別トランザクションが更新した | UPDATE の競合が最も多い原因 |
| 2. バッチ処理の遅延によるスナップショットの古さ | 大量処理や長時間 SELECT により他処理と矛盾しやすくなる |
| 3. SELECT → UPDATE のパターン | 事前に SELECT した行がその後更新されると発生 |
| 4. SERIALIZABLE をあえて使っている | READ COMMITTED に変えると消えるケース多数 |
| 5. 排他制御不足 | SELECT FOR UPDATE が適切でない、一貫したロック方針がない |
実務で使える対処方法
① トランザクション分離レベルを READ COMMITTED に変更する
最も簡単で効果的。
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1 |
SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ COMMITTED; |
READ COMMITTED は Oracle のデフォルトであり、多くのバッチ処理はこれで問題なく動作します。
SERIALIZABLE を使う必要がない場合は変更が推奨。
② 更新対象の行を SELECT FOR UPDATE で事前ロックする
競合の原因が UPDATE の衝突なら、下記の事前ロックが効果的。
後続処理が同じ行を触る場合、これで衝突が抑えられます。
③ バッチ処理を再実行方式にする(リトライ処理)
エラー発生時に 一定回数リトライするのも実務ではよくあります。
例:Java の疑似コード
大量バッチでよくあるパターンです。
④ トランザクションを短くする・コミット頻度を上げる
長時間トランザクションほど、競合して ORA-08177 が出やすくなります。
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大量 UPDATE / INSERT を1つの TX にまとめない
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処理の節目で COMMIT を挟む
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SELECT だけ先に重く実行しすぎない
これだけで発生率が大きく下がります。
⑤ 処理時間帯をずらす(バッチ間の調整)
同じテーブルを更新する 別バッチとの実行時間帯が近い 場合に頻発します。
シンプルですが効果的な対策です。
まとめ:ORA-08177 は「矛盾が起きたら強制的にエラーにする」Oracle の安全装置
ORA-08177 は Oracle が整合性を守るための正常な動作です。
ただし、発生頻度が高いと処理が進まず実務上の問題となります。
✔ まず確認すべきポイント(最優先)
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SERIALIZABLE を本当に使う必要があるか?
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更新競合を SELECT FOR UPDATE で抑制できるか?
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重い処理・長いトランザクションを短く改善できるか?
これらを見直すだけで 80% は解決します。
