グローバル化の進展とともに、技術文書翻訳の需要は年々高まっています。マニュアル、仕様書、研究論文などは、一語の誤訳が大きな誤解やトラブルを引き起こしかねません。
そこで本記事では、代表的なAI翻訳ツールである DeepL、ChatGPT、Google翻訳 の3つを比較し、技術文書に最適なのはどれかを検証します。
各ツールの特徴
DeepL翻訳
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強み: 文脈を重視した自然な訳、専門用語にも比較的強い
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弱み: 対応言語数が少なめ(約30)、無料版は文字数制限あり
ChatGPT翻訳
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強み: 翻訳に加え要約・リライトも可能、プロンプトで表現調整可
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弱み: 翻訳専用ではないため逐語的な正確性はDeepLに劣る場合あり
Google翻訳
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強み: 対応言語数100以上、無料で大量利用可能、音声・画像翻訳も対応
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弱み: 文脈理解は浅め、直訳的な表現や用語の誤訳が目立つ
実例で比較
例文① ソフトウェア仕様書風
英文
The system must be able to handle up to 10,000 concurrent connections without significant performance degradation.
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ChatGPT: システムは、最大で10,000の同時接続を処理しても、著しいパフォーマンスの低下が発生しないようにしなければならない。
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Google翻訳: このシステムは、最大 10,000 の同時接続を処理できるものであり、その際に性能が著しく低下してはならない。
評価
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DeepL → 簡潔で読みやすく仕様書的。
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ChatGPT → 忠実で正確だが少し長い。
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Google翻訳 → 意味は正しいが「このシステム」「〜ものであり」が冗長。
例文② ハードウェアマニュアル風
英文
Before replacing the power supply unit, ensure that the main power switch is turned off and the device is unplugged from the outlet.
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DeepL: 電源ユニットを交換する前に、メイン電源スイッチがオフになっていること、および機器がコンセントから抜かれていることを確認してください。
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ChatGPT: 電源ユニットを交換する前に、必ず主電源スイッチをオフにし、機器の電源プラグをコンセントから抜いてください。
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Google翻訳: 電源ユニットを交換する前に、必ずメイン電源スイッチをオフにし、電源コンセントからプラグを抜いてください。
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DeepL
形式的・教科書的な訳。「〜ことを確認してください」と丁寧。安全マニュアルとして無難。
👉 ただし「および〜」など硬い言い回しで、読み手によっては理解に時間がかかる。 -
ChatGPT
「必ず」を入れて行動を強調。自然な日本語で読みやすい。
👉 「主電源」「電源プラグ」といった用語が一般的で分かりやすい。 -
Google翻訳(正)
こちらも「必ず」を入れて強調。表現も比較的自然。
👉 「電源コンセント」という表現がやや冗長で、通常は「コンセント」で十分。
例文③ 研究論文の一節風
英文
Recent studies indicate that machine learning models can achieve high accuracy, but their interpretability remains a significant challenge in practical applications.
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DeepL: 最近の研究によれば、機械学習モデルは高い精度を達成できるが、その解釈可能性は実用的な応用において依然として大きな課題である。
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ChatGPT: 最近の研究では、機械学習モデルは高い精度を達成できる一方で、実際の応用においてその解釈可能性が大きな課題として残っていることが示されています。
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Google翻訳: 最近の研究では、機械学習モデルは高い精度を達成できることが示されているものの、実際の応用においてはその解釈可能性が依然として大きな課題となっている。
評価
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DeepL → 学術文書っぽく堅実。
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ChatGPT → 論理的で丁寧、やや長い。
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Google翻訳 → 意味は正しいが「ものの」など直訳感あり。
比較表まとめ
項目 | DeepL | ChatGPT | Google翻訳 |
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正確性 | ◎ 専門用語に強い | ○ プロンプトで改善可 | △ 誤訳が多い |
自然さ | ◎ 技術文書に最適 | ◎ 読みやすい表現 | △ 直訳感あり |
対応言語数 | △ 約30言語 | ○ 主要言語中心 | ◎ 100以上 |
追加機能 | △ 翻訳特化 | ◎ 要約・解説も可能 | ◎ 音声・画像対応 |
コスト | △ 無料版制限あり | △ 無料枠少なめ | ◎ 無料で大量利用可 |
結論:用途別おすすめ
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正確性重視 → DeepL(マニュアルや仕様書向き)
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柔軟性・リライト重視 → ChatGPT(研究者やエンジニアの補助向き)
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多言語対応・手軽さ重視 → Google翻訳(簡易コミュニケーション向き)
実務的には、DeepLで一次翻訳 → ChatGPTでリライトや用語統一という組み合わせが最も安心です。
まとめ
AI翻訳ツールはそれぞれ特徴が異なり、万能なものは存在しません。
技術文書のように正確さが求められる分野では、ツールの強みを活かして 併用することが重要です。
「DeepLで正確に翻訳 → ChatGPTで自然な文章に整える」この流れを取り入れるだけで、翻訳の質は大きく向上するでしょう。